「営業活動が属人化していて、担当者のスキル・経験に結果が大きく左右されてしまう」というのは、営業部門でよくある悩みのひとつです。
ハイパフォーマーとミドルパフォーマーで営業力の差が生じると、部門全体の成績が伸び悩んでしまう原因にもなりかねません。しかし、もしハイパフォーマーのスキルや知識、営業手法などを共有できたとしたら、営業部門全体の『営業力』を底上げできると思いませんか?
そのためにおすすめなのが、「営業プロセスの見直し」をすることです。
本記事では営業プロセスとは何か、基礎知識や「営業プロセスの見える化」をするメリット、その方法について解説します。
営業プロセスとは
営業プロセスとは、「顧客とのファーストコンタクトから受注まで」のプロセスを指します。
営業プロセスはビジネスモデルによっても変わります。たとえばBtoBの場合は「対企業」でのビジネスモデルとなるため、社内での検討、稟議といった購買プロセスも考慮した営業プロセスを考える必要があり、必然的に営業プロセスも長くなるでしょう。
対してBtoCは、個人の顧客が相手となるビジネスモデルです。個人が決定権を持っているため購買プロセスはBtoBに比べると短く、それに伴い営業プロセスも短くなるケースが多いです。
商談プロセスとの違い
商談プロセスとは営業にフォーカスしたプロセスで、「顧客へのアプローチから成約までの過程」を指します。
一方営業プロセスは、マーケティング部門による「集客から見込み客のフォロー」、営業部門による「販売・みきわめ」、両部門による「ファン化」の4ステップとして広く捉えたプロセスを指します。
つまり商談プロセスは営業プロセスの一部として包括されているもので、「販売・みきわめ」の過程をフォーカスしたプロセスとも言い換えられるでしょう。
ただし、営業分野では商談プロセスを営業プロセスとして定義する事が一般的です。
本項以降では営業部門の方へ向け、商談プロセスのことを「営業プロセス」として解説いたします。
営業プロセスは整理が必要
近年は働き方改革、人材不足などの影響により、最小限のリソースで大きな成果を出すことが求められています。
そのためには営業プロセスを整理し、営業部門における課題、ボトルネックを見つける事が重要です。
たとえば王道の営業パターンを基準にシンプルな工程で整理していくことで、限りあるリソース(人員、時間、予算)を効率的に活用することができるでしょう。
また各プロセスにおける行動を具体化していけば、「自分がどのプロセスにいるのか」「次に何をしなければいけないのか」が分かりやすくなります。
各営業担当者は迷わず効率的に行動できるようになり、生産性の向上、モチベーションアップなどの効果も期待できるでしょう。さらに、行動を具体化することで失注につながった行動を特定し、原因を分析したうえで改善策を打ち出しやすくもなります。
営業プロセスの「見える化」とは?
営業プロセスを整理したら、チーム全体で共有、つまり「見える化」することが重要です。
ここでの営業プロセス見える化とは、顧客との接点から購買までの一連のフローを分解し、図に示してわかりやすくする行為を指します。
図にするとプロセスのどの過程で問題があるのかが分かりやすくなり、具体的かつ効果的な施策が打てるようになります。ここでは営業プロセスの「見える化」について解説していきます。
ブラックボックス化した営業プロセスを可視化すること
ブラックボックス化とは「○○さんしかその業務の詳細を知らない」というふうに、業務が属人化することで起きる現象です。限られた人しかプロセスを知らず、かつ業務が依存しているため、その人物がいなくなってしまえばプロセスそのものが見えなくなってしまいます。
営業プロセスのブラックボックス化が進んだ場合、営業活動の成果がハイパフォーマーに依存しやすくなります。よってハイパフォーマーが異動、離職などでいなくなると、業績が大きく下がるといったことになりかねません。
またどこかのプロセスにボトルネックがあっても、各担当者の営業プロセスを把握していないと改善点にも気付きにくくなってしまいます。
ブラックボックス化した営業プロセスを「見える化」できれば、チーム全体で改善策を見つけやすくなります。それだけではなく、社内全体でも連携しながら、新たな施策ができるようになるでしょう。
営業プロセスの「標準化」とは
営業プロセスの「標準化」とは、営業活動における「基準」を決めることを指します。
とりわけ営業プロセスにおいては、優秀な成果を出しているハイパフォーマーの“勝ちパターン”をもとに、組織全体のプロセスとして再構築することが「標準化」と定義できるでしょう。
営業担当者全員が成約につながりやすいプロセスを踏めるようになれば、ハイパフォーマー以外の担当者でも成果を出しやすくなります。
さらに、営業プロセスの標準化は人材育成にも活用できます。
たとえば優れた社員の知識やナレッジを蓄積したうえで研修に活用したり、ツールなどを使用して共有したりすることで、チーム全体のスキルの底上げが可能です。
また全員に均一な教育・情報共有を行うことで、個々の課題や問題点がどこにあるのかを見つけやすくなるメリットも得られます。
営業プロセスの「平準化」とは
営業プロセスの「平準化」とは、全員が一定のプロセス・行動によって業務を進めていく仕組みをつくることを指します。
業務が定型化されることで業務の効率・スピードが向上し、生産性アップが期待ます。
また営業部門では特定の担当者に業務の偏りが生じるケースも多いですが、営業プロセスを平準化し、可視化することで、担当者による業務量の偏り・ばらつきなども解消しやすくなります。
「手が空いている人」が見える化され、さらに有効活用できるようになれば、より多くの顧客にアプローチをかけられるようになります。そうなれば成果の向上も期待できるでしょう。
営業プロセスを見える化するメリット
営業プロセスを見える化すると、さまざまなメリットが得られるようになります。
フローが最適化される
各営業プロセスを見える化することで、属人化しやすい「営業パターン」「ノウハウ」なども可視化されます。
正確な情報をチーム内で共有しやすくなるほか、プロセスを見える化することで“これまで見えなかった課題”を見つけやすくなります。
課題に沿ってフローを改善していけば、フローが最適化され、効率よく営業活動を行えるようになるでしょう。
営業チーム全体の生産性が高まる
営業プロセスの見える化によって営業活動を標準化・平準化していけば、営業チーム全体の底上げ、生産性アップが期待できます。
プロセスや行動を見える化したうえで「誰でも達成できる最低ライン」を定めて標準化することで、営業担当者の成果が上がっていない場合にどのプロセスでうまくいっていないのかを把握しやすくなります。
課題を把握しやすくなることで的確な対策が打てるようになり、チーム全体としての営業力底上げへとつなげられるでしょう。
また平準化によって各担当者の業務の進め方や業務量の配分が最適化されれば、営業活動の効率化、生産性の向上につながります。
「誰かに業務が偏ることなく、チーム内で連携して成果を出せる」という環境が構築できれば、営業担当者のモチベーションアップや社員エンゲージメント向上といった効果も期待できるでしょう。
スキルの底上げ、人材育成に役立つ
営業プロセスの見える化によってハイパフォーマーのノウハウが提供されれば、ミドルパフォーマーを効率的に育成し、今より高い成果を出すことができます。
チーム全体の営業力を底上げして“売れる営業チーム”へと成長できれば、中長期的な成果も望めるでしょう。
また優秀な営業担当者のスキル、知識、ノウハウなどをナレッジとして共有した場合、人材育成にも役立てられます。
たとえば新入社員研修の教材に「ハイパフォーマーの勝ちパターンである営業プロセス・トーク」を盛り込むことで、自社の営業スタイルに合った人材育成が可能となります。
こうした研修・教育を繰り返し行えば、即戦力となる人材を効率よく育成できます。結果として、研修にかける時間やコストなどの削減にもつながるでしょう。
チームや個人の適切な評価・改善につなげられる
営業プロセスを見える化することで、マネジメント層が各営業担当者のプロセスや進捗状況、成果を正しく把握できるようになります。
またプロセスや進捗状況を把握する過程で、各担当に対し「どこでどんな問題が発生しているか」も把握することができます。
これにより、各プロセス・アクションでの課題に対し、適切な評価・アドバイスがしやすくなります。
各営業担当者へ「改善のために次に取るべき行動」を具体的にアドバイスできれば、売上のボトルネックとなっていた行動などが解消され、さらに強力な営業チームへと変えていくことが可能です。
営業プロセスの整理・見える化のステップ
ここまでは営業プロセスの整理と見える化のメリットについてご紹介してきました。本項では、営業プロセスの整理・見える化のステップを解説していきます。
1.顧客の購買プロセスを明確化
はじめに、顧客が自社の商品・サービスに興味を持ち、購買へ至るまでのプロセスを明らかにしていきましょう。一般的な顧客の購買プロセスは「潜在課題の認識」からはじまり、次のように進んでいきます。
【顧客の購買プロセス(BtoB)】
- 潜在課題の認知:どんな問題があり、どうすれば改善できるか
- 課題の形成・ニーズの要件定義:課題の定義と要求事項を明確にする
- 解決に向けた情報収集:解決の方向性を決め、解決を叶える商品・サービスを調べる
- 複数商品、サービスの比較検討:自社に合った商品・サービスを比べながら検討する
- 稟議の承認、最終決定:社内稟議での承認・決裁により最終決定をする
- 購買:購入・契約する
【顧客の購買プロセス(BtoC)】
- 潜在課題の認知:どんな問題があり、どうすれば改善できるか
- 解決に向けた情報収集:解決の方向性を決め、解決を叶える商品・サービスを調べる
- 複数商品、サービスの比較検討:自分に合った商品・サービスを比べながら検討する
- 最終決定:1つの商品・サービスに絞り込み決定する
- 購買:購入・契約する
購買プロセスを定義したら、それぞれのプロセスごとに具体的な行動の流れを定義していきます。
BtoBでは、役員などの「意思決定者」、購買判断をする「購買責任者」、現場で利用する「利用者」の3つの立場の人たちが起こす行動を定義する必要があります。
たとえば「潜在課題の認知」では、利用者が現場の状況を社内共有し、購買責任者が情報収集をして予算感、業界の動向のキャッチ、周辺知識を深めるなどの行動を行ったうえで意思決定者へ購買の確認を取る……という流れが一般的です。
そして意思決定者が「予算の承認」や「購買行動の許可」を行うことで次のプロセスに進むことができます。
また、顧客プロセスの各段階で「顧客が考えていること」「顧客の心配事」も明文化していきましょう。
顧客プロセスと導入までの行動、考えていること、心配ごとをそれぞれ定義したら、営業プロセスの可視化・定義へと活用します。
2.自社の営業プロセスを可視化
次に、購買プロセスを踏まえ、自社の営業プロセスを明らかにしていきましょう。たとえば、購買に至るまでの営業プロセスをシンプルに表すと、次のようなステップが考えられます。
【営業プロセス】
- アプローチ
- 案件化
- 提案実施
- 受注交渉
- 受注
扱う商材やビジネスモデルによってはさらにプロセスが増えることもあります。
ただし重要なのが、「顧客プロセスと導入までの行動の流れ」「顧客が考えていること」「顧客の心配事」をふまえて営業プロセスを設定することです。
顧客の購買行動や考えを無視した営業プロセスを設計してしまうと、成果につながりにくくなってしまいます。
「顧客が最大の価値を得るためには自社がどのようなアクションを取るべきなのか」を挙げ、営業プロセスを設計していきましょう。
また、マーケティング部門等のサポートなど、他部門との連携が必要であればプロセスに組み込んでいきます。加えて、他部門への共有が必要な情報や、そのために使用すべきシステム・ツールなども含め設計していきましょう。
3.営業プロセスを具体的に定義
営業プロセスを決定したら、次は「初回訪問で何をどんな順番でやるのか」といった細かな営業プロセス、アクションをひとつひとつ定義していきます。
ここで重要なのが、どの営業が担当してもプロセスの違いが生まれないようにすることです。
先の例でいえば「初回訪問」だけでなく、「ヒアリングして課題や困りごとを確認する」「初回訪問でサンプルを試してもらう」など、営業プロセスをより細かなアクションとして定義するのです。
また「次の購買プロセスへ進んでもらえるゴール」を設定し、それをクリアするために必要な行動を決めることも重要でしょう。
顧客の購買プロセスに沿って「ゴール達成のために取らねばならない行動」を具体的に定義し、共通認識にしていけば、営業担当者間での“プロセスの認識違い”がなくなります。
そうなれば、最終的に成約率、受注率の向上も期待できるでしょう。
SFA/CRMツールを使って一元管理・営業プロセスの見える化をする
営業プロセスの改善や見える化をするには、SFA/CRMツールを使う事が効果的です。
SFAツールの機能・メリット
SFAツールとは、営業活動を自動化・効率化するための営業支援ツールです。
たとえばHubSpot社のSFAツール「Sales Hub」は、営業プロセスの整理・見える化に役立つ機能が多数揃っています。
顧客情報やコミュニケーションの履歴はもちろん、各営業担当者の商談・進捗状況などもひと目でわかるようになっており、次に誰が、どのようなアクションプランを行うべきかが明確になります。
さらに、Sales Hubには顧客情報やコミュニケーションの記録の共有機能、営業プロセスをナレッジとして共有する機能も備わっています。
こうした機能を活用すれば、営業活動の属人化を防ぎ、各営業担当の営業プロセスを最適化できる可能性が高まるでしょう。
CRMツールも併用すればより効率化が叶う
SFAツールはCRM(顧客管理システム)と併用することで、より顧客のニーズを満たす営業プロセスが構築できます。
例えばCRMツールの「HubSpot」では、SFAツールの「Sales Hub」と連携すると、同じツール内で顧客情報・商談情報を紐づけて一元管理できます。顧客データや営業活動の情報入力、問い合わせ管理、メール送信といった工程の自動化・省力化も可能です。
こうした機能を活用し効率化をはかることで、さらに営業プロセスを改善し、営業活動の最適化を目指すことができます。
またHubSpotやSales Hub内に蓄積された膨大なデータを分析することで、顧客の詳細なニーズ、売れる傾向、成約につながりやすいアクションなどの把握もしやすくなります。
この顧客データをもとに営業プロセスの検証、ブラッシュアップを繰り返していけば、さらなる営業活動の効率化、成果の最大化が期待できるでしょう。
導入目的と効果をマネジメント層が率先して組織全体に説明し運用の定着を目指す
ここまでツール導入のメリットについてお伝えしてきましたが、ツールは導入するだけではなく定着することではじめて意味があります。
そのためにはまず、自社の営業プロセスを理解し、適切な設計をしていくことが重要です。加えて営業プロセスを組織全体に根付かせるためには、マネジメント層がツールを導入する目的を明確にしたうえで、組織や従業員一人ひとりにとってどんなメリットがあるのかをしっかりと説明し、理解してもらう必要があるでしょう。
なお、自社で業務や運用の設計が難しい場合は、外部の専門家を活用することをおすすめします。
当社アンドデジタルでは、SFAやCRMなどのデジタルツールの活用支援、およびセールス・マーケティングのコンサルティング支援を行っております。自社に最適な営業プロセスの定義・設定からツール活用による効率化など幅広くサポートいたしますので、ご不安な場合はぜひご相談ください。
まとめ
本記事では営業プロセスの概要や「見える化」についての知識、メリットについてお話ししました。また営業プロセスを整理・見える化していくためのステップや、SFA/CRMツールの活用についても解説しました。
企業においては適切な営業プロセスを構築し、見える化していくことでより効率的な営業活動を実施できるようになります。各営業担当者のプロセスを標準化・平準化することで、課題や改善点にも気が付きやすくなり、長期的な成果の創出にもつながります。
「営業プロセスの属人化を解消し、チーム全体で成果を上げられるようになりたい」
「マーケティング部門のデータも含めて利活用し、営業活動の質を高めたい」
このようなお悩みがありましたら、ぜひアンドデジタルまでご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が営業プロセスの属人化や、SFA/CRMツールの導入についてお悩みの方の参考になれば幸いです。