営業の効率化を図るSFAというビジネスツールをご存じでしょうか?SFAは営業活動の生産性や効率を向上させるシステムとして注目を集めています。
しかし、営業に役立つツールにはCRMやMAなど他にも有名なものがあります。SFAは他のツールと比べてどのような点が優れているのでしょうか?
本記事はそもそもSFAとはなにか、その主な機能やCRM・MAとの違い、導入のメリット・デメリットを解説します。また、具体的におすすめのSFAを挙げ、選び方・活用のポイントも紹介するのでぜひ役立ててください。
SFAとはどんなツール?
SFAとは、簡単にいうと営業活動を可視化して業務を効率化するビジネスツールのことです。
SFAは「Sales Force Automation」の頭文字を取った略語で、日本語では「営業支援システム」などと訳すことができます。医療用語で浅大腿動脈を意味するSFAとは無関係です。
SFAは、営業活動の進捗や活動に使う情報を可視化して管理・分析することに長けています。うまく活用できれば、業務の効率化にもつながる便利なツールです。機能に関しては、次の章で詳しく解説します。
SFAの主な5つの機能
SFAは営業ビジネスの情報の管理・分析や、営業担当者の行動・スケジュール管理など、さまざまな機能を持っています。ツールによって利用できる機能は異なりますが、この章では主な機能を5つ紹介します。
顧客情報の管理
まず、顧客情報をSFAで簡単に管理することができます。交換した名刺などを使って、次のような情報をまとめて管理できます。
- 所属する企業名・住所
- 営業・客先担当者の氏名と職種
- 決済者氏名・職種
- 電話番号
- 問い合わせ履歴
- コミュニケーション履歴
- 商談履歴
- 購入・契約履歴
Excelなど表計算ソフトで顧客情報を管理する会社も多いですが、顧客数が増えてくると表計算が重くなって使いにくくなることもあります。また、情報漏洩の危険も少なくありません。適切に管理できるツールを活用して、顧客情報を安全に管理することが大切です。
案件の状況管理
営業案件の情報や進捗状況も、SFAでまとめて管理できます。SFAで管理できる具体的な情報は次のとおりです。
- 対象商品・代理店
- 売上金額
- 営業の進捗状況・成約確度
- 活動・商談履歴(過去の提案や見積もりなど)
- 今後の営業スケジュール
- 使用する資料
利用するSFAによって管理できる項目は異なるので、あくまでも例として参考にしてください。
営業担当者の行動管理
また、会社の営業担当者の行動をSFA上で確認することもできます。営業担当者が自分の情報を管理することはもちろん、周りの営業担当者の情報を周囲が把握することも可能です。SFAで共有することで情報が視覚化されるので、管理がしやすくなります。
SFA上で管理できる営業担当者の行動情報は次のとおりです。
- 新規訪問回数
- アポイント数
- メール(アポ取り・確認・お礼)
- 有効商談数・有効商談率
- 受注数・受注率
行動管理の機能では、営業担当者の進捗や成果を数字で表すことができます。自身の業務を見つめ直したり、人事評価に活用したりすることもおすすめです。
営業結果の分析
営業活動の結果のことを、予算と実績を略して予実管理と呼ぶことも多いです。SFAでは、この予実管理の機能も利用できます。
予実管理機能では、使用目的に合わせて好きな帳票やグラフを作成できます。例えば契約数のグラフを作成して目標契約者数とのギャップを分析したり、営業担当者ごとの予算達成率の帳票を作成して成果を確認したりするなど、活用方法はさまざまです。
簡単な入力で自動的に集計されるので、分析のために業務効率を落とさないことも魅力的です。
営業担当者のスケジュール管理
さらに、営業部門の管理者・マネージャー向けに、営業担当者のスケジュール管理ができる機能もあります。
営業の仕事に欠かせない日報や週報などの活動報告がSFAで完結します。社員の商談の進捗状況や今後のスケジュールなどが一元管理できて便利です。必要に応じてコメントを残したり、通知機能を付けてリアルタイムで把握したりすることもできます。
また、決められたフォーマットにしたがって入力するだけなので、社員の作業の簡略化にも期待できるでしょう。
SFAを導入する3つのメリット
SFAにはさまざまな機能があることがわかりました。では、それらの機能をビジネスに導入すると、どのようなメリットがあるでしょうか?
業務の可視化
まず、SFAには業務を可視化する効果があります。この効果は、営業担当者と管理者双方にとってメリットです。
まず、営業担当者は自分が担当する案件や商談の状況が可視化し、把握しやすくなります。案件のブラックボックス状態や営業の属人化を防ぐことにもつながるでしょう。
また、営業にあたる社員一人ひとりの行動が可視化された情報は、マネジメントにも役立ちます。行動や営業結果を分析することで、社員の評価につながる情報も視覚化できます。
業務の効率化
SFAの活用で、業務の効率化を図れます。業務や案件の管理から顧客情報の閲覧、日報入力など、SFAには営業活動に関する機能が集約されているためです。
一度入力すればSFA上にさまざまな情報をまとめられるので、何度もフォームに入力したり、複数のツールやソフトを行き来して情報を探したりする必要がありません。営業担当者は可視化した案件情報で効率よく働くことができ、活動報告などに使っていた時間は他の業務にあてることができます。
また、SFAのなかには、他のツールと連携できるものもあります。連携したツールには、SFAで入力した情報が自動で管理されるので、作業時間の短縮にもおすすめです。
ノウハウの蓄積・共有
SFAで日々の業務や成果をデータとして蓄積・共有することは、営業部署全体のパフォーマンスにつながります。
営業の仕事は、担当者個人の力量による成果差が大きくなりやすいです。そこでSFAを使い、商談の管理や準備を複数人で共有すると、適格なアドバイスやフォローができます。こうした助け合いの動きで連携を強め、個人の実力差を埋めることも可能です。また、担当者不在時や引継ぎの際にも役立ちます。
さらに、日々入力されるデータは、説得力のある営業ノウハウとして蓄積されます。個人の成功体験や経験を共有できるので、営業部署全体のステップアップや教育にも役立つでしょう。
SFAを導入する2つのデメリット
SFAはさまざまなメリットがありますが、導入にはデメリットもあります。マイナス面も理解したうえで導入を検討しましょう。
SFAの導入や運用に工数が発生する
SFAの利用には、導入や運用に手間や時間がかかるというデメリットがあります。
例えば導入には、業務課題の調査や導入目的の決定、SFAツールの選定、無料トライアルの実施など、多くの工程を要します。
また、SFAがメリットを発揮するには、適切な管理・運用が必要です。社内にツールが普及するよう従業員の疑問に都度答えたり、売上につながるようSFAで集積したデータやレポートを定期的に分析したりする工程も要します。
こうしたSFAの管理や運用の工程に対応するには、企業の体制を整えることをおすすめします。具体的には、SFA専任の担当者を設けて導入や管理を一任したり、営業部署の管理者にデータ分析の業務を任せたりするとよいでしょう。
業務にデータ入力の工程が発生
SFAのメリットを得るには、データの入力が不可欠です。営業担当者全員がデータ入力を自力でおこなう必要があるため、慣れるまでは面倒に感じられる場合もあるかもしれません。
入力がスムーズにできるようになれば、大幅な業務の効率化が図れるので、トータルでは時間短縮になる場合が多いです。しかし、社員が入力業務に慣れるまでは必要に応じてサポートをおこないましょう。
例えば、導入からしばらくの間は入力業務も人事評価に加える、必要な機能が過不足なく揃っているツールを選ぶなどの工夫は、入力業務の負担軽減につながります。
また、デジタルツール導入支援サービスを利用することもおすすめです。
アンドデジタルは、創業以来、デジタル・データ活用によって中小・ベンチャー企業の売上向上に貢献してきた会社です。
デジタルツールの選定や導入、定着化などのサポートもしているため、業務の効率化が目指せます。デジタルツールの導入に迷っている企業担当者の方は、お気軽にお問合せください。
SFA・CRM・MAの違い
SFAと似たツールにMAがあります。また、混同しやすい言葉としてCRMが挙げられることも多いです。ここで3つのツールの意味や役割を整理しましょう。
まず、CRMは「Customer Relationship Management」(顧客管理)の略で、顧客の情報を管理するツールです。顧客の氏名や所属、アポイント履歴などの情報を蓄積します。CRMは一度契約した顧客との関係の維持や向上に役立てたいツールです。
まずMAは「Marketing Automation」の略語です。営業と深い結びつきのあるマーケティング・顧客とのコミュニケーションを自動化する機能を持っています。自社の製品やサービスに興味を持っていそうな見込み顧客の捜索や獲得に役立ちます。
対してSFAは営業管理と営業のアクション自動化・省力化をおこなうツールです。つまり営業・マーケティング業務の流れとしては、MAで見込み顧客を獲得し、SFAを使って営業活動をおこなうイメージです。
そしてCRMは「Customer Relationship Management」(顧客管理)の略で、MA・SFAを含む顧客関係管理をする計画・行動のすべてのことをいいます。マーケティングと営業双方の業務で顧客関係の構築・維持・向上に役立つツールです。
効率よく、営業担当者のパフォーマンスを向上させるなら、SFAだけでなくCRMやMAの3つを併用するとよいでしょう。
SFAの選び方
続いて最適なSFAの選び方を解説します。SFAは有益ですが、取り扱う商材や営業の方法、コストなど、会社に合わないものを使っても十分な効果は得られません。この章では、会社に適したSFAを選ぶ際に特に比較したいポイントを3つ紹介します。
操作性
操作性がよいかどうかは、SFA選びの大切な要素です。
多数の機能があって便利なツールでも、使いこなすことができなければ意味がありません。操作性が悪いツールは普及が難しく、従業員の負担を増やすことにもなってしまいます。
SFAを選ぶなら、営業担当者や管理者の誰もが感覚的に使いこなせるようなものを選びましょう。使いやすいSFAは業務の内容やスタイルによって異なるので、自社が使いたい機能が選べるような多機能なツールを選ぶことがおすすめです。
機能・サポート
SFAは、搭載された機能やサポートが会社や営業部署に適したものを選びましょう。
機能面を比較する際は、まず会社や部署に必要な機能を洗い出すとわかりやすいです。ツールによって主軸とする機能は異なるので、会社に特に必要な機能が充実したものを選ぶと業務に大いに役立ちます。
また、社内ですでに使用しているツールがある場合、そのツールと連携できるものだとSFAの導入もスムーズです。
SFAの比較で忘れがちなのが、ツール制作会社のサポート面です。特に導入したばかりのころはツールに関する疑問や懸念が挙がりやすいので、気軽に問い合わせできるツール制作会社を選ぶことをおすすめします。専任の担当者が導入から定着までを支援するメーカーもあるので、導入に不安がある会社はサポートが手厚いものを選びましょう。
コストと会社の予算
もちろんコスト面も重視しましょう。いくら便利なツールでも、コストと会社の予算が合わなければ、利用を継続できない事態にもなりかねません。
SFAを選ぶ際はまず予算を決めて、予算の条件にあてはまるツールのなかで機能面やサポート面を確認するとよいでしょう。機能が限定的で価格が抑えられているツールもあるので、予算や業務課題を考えて、会社に合ったものを選ぶことが大切です。
場合によってはカスタマイズ費用がかかる場合もあるので、初期費用と継続的に利用するとかかる費用に加えて、ある程度ゆとりをもっておくと安心です。
SFAのおすすめ5選
SFAの機能や選び方がわかったところで、中小・ベンチャー企業におすすめのSFAを5つ紹介します。それぞれ異なる特徴を持っているので、自社に向いているものがないか参考にしてください。
HubSpot「Sales Hub」
Sales Hubは、HubSpotが提供する営業支援ソフトウェアです。最低限の機能をシンプルに利用するなら完全無料で使い続けることができます。CRMとして開発されたソフトウェアですが、取引パイプラインや見積もり作成など、SFAとして活用できる機能も多いです。
無料版のソフトウェアは有料版にアップデートができます。業務の成長や変化に合わせて機能を追加できるので、無料版から始めて使用感を試すこともおすすめです。
HubSpotはアメリカマサチューセッツ州の会社ですが、日本語による電話・メールなどのサポート体制もあるので安心して利用できます。
このようにコスト面やサポート面に不安がある場合でも、さまざまな企業で使いやすいSFAです。
Sales Force「Sales Cloud」
Sales ForceのSales Cloudは、タスクの自動化で業務効率の向上が期待できるSFAツールです。
主な機能は、商談管理・営業支援・売上予測の3つです。また、収益管理やCRMデータ管理、人員配置提案などの機能も有償で追加できます。
また、Sales Cloudは他社の営業支援ツールと組み合わせて使用できます。他のツールに入力した情報を自動でSales Cloudに反映したり、Sales Cloudに登録した情報を他ツールに出力することも可能です。
株式会社ジオコード「ネクストSFA」
ネクストSFAは、株式会社ジオコードが運営するツールです。SFAの機能だけでなくMAやCRMの機能も搭載されており、1つのツールで営業活動のすべてを支援してもらえます。ツールを複数使い分けるよりも導入や普及が簡単です。
ネクストSFAは日本の会社が運営するツールなので、日本語でサポートが受けられるメリットがあります。また、日本の各種ビジネスツールとの連携にも対応しており、導入もしやすいです。さらに導入にかかる初期費用や、導入後のサポートが無料である点も魅力です。
サポート付きの1週間の無料体験もあるので、気になる人は試してみるとよいでしょう。
株式会社マツリカ「Senses」
SensesはAIによる入力データの分析やアドバイス機能が特徴的な営業支援ツールです。案件確度や想定されるリスク・類似案件などを分析して、営業活動をサポートします。カメラや画像を使えば、搭載された自動で文字を読み取るOCR機能によって入力も手軽におこなえます。
また、稼働中の案件を管理する案件ボードは、直感的に操作しやすいデザインです。更新頻度での色分けやアラート機能でミスも防ぐこともできます。
スマートフォン用のアプリも利用できるので、リモートワークや出先からの入力・閲覧も可能です。このようにSensesは場所や時間を選ばず、感覚的に操作できるSFAです。
レッドフォックス株式会社「cyzen」
外出した社員の活動が把握しづらいと悩んでいるなら、cyzenがおすすめです。cyzenは外回りの合間にもスマートフォンから簡単に入力できるので、外回りの営業活動が把握しやすくなります。
特に、顧客データや過去の案件履歴を管理するオリジナル地図作成機能は特徴的です。GPS機能を使用して取得したデータは、顧客情報を入力したり、アイコンを設定したりすることで、地図と紐づけて記録することができます。また、報告書や写真などのデータを合わせて保存することも可能です。
他にも、出退勤打刻や交通費自動精算など、外回りの営業スタッフにうれしい機能が集約されています。
SFAの導入・運用で失敗しないポイント
有益なツールを導入しても、社員に浸透しなかったり、かかった費用に見合う効果が得られなかったりしてはもったいないです。SFAを導入して成果を得るには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。この章では、導入や運用の失敗を避ける方法を解説します。
社内で運用体制を整えておく
計画性なしに導入しても、SFAのメリットを活かすことはできません。社内でSFAを正しく運用するには、次のような手順で導入を進めましょう。
- SFA導入を推し進めるチームを編成
- 業務課題や社員の困りごとの調査
- SFAの導入で解消したい課題・導入目的を決定
- 課題や目的に適したSFAを探す
- 無料トライアルを実施する
- SFA導入・運用の開始
便利なツールだからといって、運用するだけで業務課題が解消されるわけではありません。SFAを導入する目的や解決したい課題を明確にすることが大切です。
また、課題解決のためにはSFAを使ってデータを分析する必要があります。管理職がSFAを理解して、適宜データ分析ができる環境を整えておくことも重要です。
分析結果でPDCAを回す
SFAは「使い始めたらすぐに営業成績が上がる」というようなツールではありません。入力を続けて営業活動のデータを集積し、分析していくことが重要です。
営業活動の記録を続けると、スムーズに成約できた案件や、何度も足を運んだものの成約に至らなかった案件など、成功したデータと失敗したデータの双方が集まります。それらのデータを分析することで、気付きにくかった失敗の原因が判明したり、成功時に共通したよい部分が明らかになったりと、次の営業活動に活かせる発見があります。
SFAを導入したら、データの分析と検証を続け、次の案件につなげるPDCAサイクルを回すことが大切です。このサイクルを続けていくことで、営業部署全体のパフォーマンス向上がみえてきます。
デジタルツール向けの補助金を申請する
SFAは基本的に毎月利用料がかかるので、導入が難しいと考えてしまう企業も多いかもしれません。もし費用面でSFAの導入を諦めているのなら、デジタルツール向けの補助金を申請することも検討してみてください。
昨今日本では企業のデジタルツールの導入を推進する動きがみられます。例えば、中小企業基盤整備機構(以下中小機構)がおこなうIT導入補助金事業もその一例です。IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がデジタルツールを導入することで、業務効率や売上を向上させることを目的としています。
2023年度のIT導入補助金では、デジタルツールの導入にかかった費用の1/2を補助してもらえます(通常枠 A・B類型の場合)。
ただし、すべてのSFAが補助金の対象になるわけではありません。補助対象となるのは中小機構の認定を受けたIT導入支援事業者のデジタルツールに限られます。補助金を申請するなら、「IT導入支援事業者採択一覧」で気になるツールが補助対象か調べてから導入しましょう。
デジタルツールの導入支援サービスを利用する
「デジタルツールの導入は初めてで、定着させる自信がない」「どんなサービスが向いているかわからない」など、SFAの導入に不安を感じる企業も多いでしょう。SFAなどツールの導入に困ったら、デジタルツールの導入支援サービスの利用もおすすめです。
導入支援サービスは、専門的な知識を持ったアドバイザーによる導入ツールの選定から定着までトータルで支援を受けることができます。
例えばアンドデジタルでは、企業の現状分析・業務課題からサポートするので、企業に最適なSFAを見つけることができます。また、ツールの導入・運用の支援はもちろん、その後の課題解決までワンストップでサポートが可能です。
まとめ
SFAは営業活用を効率化し、営業担当者や管理者のパフォーマンスを向上させる目的を持ったビジネスツールです。
導入すると、顧客情報・案件情報・営業担当者の活動やスケジュールの情報など、さまざまな情報をSFA上で一元管理することができます。記録したデータはグラフや表などにして分析することができ、その後の活動や教育などに活かすことも可能です。
ただしSFAの機能を活かすなら、数多くあるツールのなかから自社に合ったものを選ぶ必要があります。業務課題や導入目的を明確にし、状況によっては導入支援サービスを利用するなどして、最適なツールを選び営業活動に活かしましょう。